その日、わたくしは、急ぎ足で並木道を歩いていました。
かなり背が高い並木です。
高さ15メートルくらいでしょうか。
見上げると、並木には、白い花が咲いています。
ちょっと、モクレンに似ています。
親戚かな?
白い花をよく見ようとして、目の前の木に近寄ってみます。
幹に何かがぶら下がっています。
名札です。
縦1センチ、横5センチほどの、銀色に輝く金属の名札です。
名札には、〈1310-L12-01-B08-01〉と、あります。
どうやらここの並木全員に、ちゃんと名札がついているようです。
目の前の木に、呼びかけます。
長いので、中略します。
「B08-01号くん」
モクレンの親戚、と呼ぶよりも、数字と記号だけれども、
B08-01号と呼んだほうが、仲良くなれる気がします。
わたくしは、このB08-01号が立っている場所を覚えておこうと思います。
いつかまた、この近くを通りかかったとき、
B08-01号に声をかけようと思うのです。
それまで、お元気で、B08-01号。
君は、わたくしのことを、なんと呼んでくれるのかな?
(紫 麻乃) |