その52
 君の名前を、呼んでみた。

 

 その日、わたくしは、急ぎ足で並木道を歩いていました。


 かなり背が高い並木です。
 高さ15メートルくらいでしょうか。
 
 見上げると、並木には、白い花が咲いています。
 ちょっと、モクレンに似ています。
 親戚かな?

 白い花をよく見ようとして、目の前の木に近寄ってみます。
 幹に何かがぶら下がっています。
 
 名札です。
 縦1センチ、横5センチほどの、銀色に輝く金属の名札です。

 名札には、〈1310-L12-01-B08-01〉と、あります。

 どうやらここの並木全員に、ちゃんと名札がついているようです。

 目の前の木に、呼びかけます。
 長いので、中略します。

 「B08-01号くん」

 モクレンの親戚、と呼ぶよりも、数字と記号だけれども、
 B08-01号と呼んだほうが、仲良くなれる気がします。
 
 わたくしは、このB08-01号が立っている場所を覚えておこうと思います。
 いつかまた、この近くを通りかかったとき、
 B08-01号に声をかけようと思うのです。

 それまで、お元気で、B08-01号。


 君は、わたくしのことを、なんと呼んでくれるのかな?

 (紫 麻乃)

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